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The GIFT
The GIFT
プレゼントが彩る12の物語(1)天木 麻乃
「ねえ、今日を友達記念日にしよう」
中学生の頃、親友だった貴美枝が言った。
「今日を私たちの友達記念日にして、10年後大人になったらこのカプセルを掘り起こすの。中には、10年後のお互いへのプレゼントを入れておくのよ」
そういって、二人で校庭の隅にカプセルを埋めた。
二人だけの思い出の場所。
その後すぐ彼女は東京へ引っ越し、それ以来会ってはいない。
10年後の今日。
それはつまり、明日だ。
私も彼女も、もう24。
もう立派な大人だ。
そもそもあんな子供の頃の約束、覚えているのかすら怪しいものだ。
でも、私は覚えていた。
あの日の夕日の暑さも
彼女の笑った顔も
土を掘り起こす感触も
今でも昨日のことのように思い出せる。
自分でも不思議だ。人間はこの年になっても
こうも子供の頃の体験を大事に抱えて生きていくのだろうか。
明日、きっと彼女は来ないかもしれない。
それでも私は、あのカプセルを掘り起こしてみようと思う。
中には何を入れたのだったか…。
そんなことを考えていると
不意に携帯の着信が鳴った。
反射的に通話ボタンを押すと
電話口で、懐かしい響きの声がした。