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The GIFT
The GIFT
プレゼントが彩る12の物語(6)天木 麻乃
中学の卒業式
大好きだったあなたに
制服の第二ボタンをねだった
他にもライバルはいっぱいいたけれど
どうしてもあなたのボタンが欲しくて
体育館を出てすぐに呼び止めた
今考えると
なんてもどかしいのだろう
私はあなたと友だちになりたかったわけでも
特別な存在になりたかったわけでもない
ただ、私はその小さな金色のボタンを見つめて
あなたのことを思い出したかったのだ
こういう気持ちをなんと呼ぶのだろう
憧れ?それともやっぱり初恋、なんて呼ぶのだろうか
まだ芽吹く前の新芽のような気持ち
やわらかくて、形もない、はっきりした名前さえも
今も、私はこのボタンを見るたびに
あなたのことを思い出す
どれだけ年月がたとうと変わらない
心が浮き立つ感覚
こんな気持ち、それ自体が
いつまでも色褪せない
宝物なのかもしれない