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わたしの、宝石箱。(12)雁屋 優

梅の頃の雨と書いて、梅雨。

梅の実の香りをかぐと、思い出すことがある。
それは、梅干しを漬けること。

まだ青い梅の実が黄色に色づくまで待ち、そのヘタを取る。それから下ごしらえをして、土用の入りの頃に干しはじめるのだ。

ヘタ取りをする時期は、ちょうど梅雨の頃、雨音を聞きながら。私はあまりヘタ取りが上手くなかった。だからそのうちヘタ取りを頼まれなくなってしまった。

梅干しは、甘すぎず、かといって極端に酸っぱいのもよくない。まろやかなのがいい。市販の梅干しもおいしいけれど、私の好みに合うものにはなかなか出会えない。家で漬けた梅干しが、ちょうどいい。

Yu Kariya
Writer/Essayist
URL:https://note.com/yukariya07

 
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ショートエッセイ「わたしの、宝石箱」全12話をお届けしました。ご覧いただき、ありがとうございます。

次回より、柊織之助さんによる短編小説「お裾分け好きの裾野さん」(全12回)の連載をスタートします。

あらすじ:
アパートで一人暮らしをしている大学生の主人公。隣の部屋の住人・裾野(すその)さんが事あるごとにお裾分けをくれる。あまりに多いお裾分けの回数に断ろうと思うけれど、いつも酒のつまみなどを作ってくれるので断れない。今日もビール片手に裾野さんの作ったおつまみを食べるのだった。

どうぞお楽しみに。
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