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駅のホームで出会ったおばあちゃまのおかげで、私の30年後が楽しみになった話フジオカテシロ

駅のホームで出会ったおばあちゃまのおかげで、私の30年後が楽しみになった話

ある日、仕事の打ち合わせ帰りに駅のホームで電車を待っていると、知らないおばあちゃまに話しかけられました。おばあちゃまは私の足もとを指して尋ねました。

「あなたの履いているその靴、素敵ねぇ。私もそういう靴を履きたいのだけど、どうやって探したらいいのかしら?」

その日私が履いていた靴は、かかとのヒール部分が低い「フラットシューズ」や「バレエシューズ」といわれるタイプの靴。言葉で説明するよりも写真で見た方がいいかなと思って、スマホでAmazonにアクセスし、フラットシューズ、バレエシューズで検索しました。

リストアップされた画面を見せると「そうそう、こういうの!」と、とってもうれしそうなおばあちゃま。

さらに、「どんな言葉で探せばいいのかしら?」と聞かれたので、フラットシューズとかぺたんこな靴が欲しいとお店の店員さんにきいてみてはいかがですか、とお伝えしたところ、

「見せてくれたこのページはAmazon?私もね、いつもAmazonで買ってるのよ。さっきのキーワードで検索すればいいのね?」

え、おばあちゃま(推定70代半ば〜80代)、
Amazon使ってるんですか??

しかも、

「なんていうあれ、プライムっていうの?あれ便利よね、翌日には届けてくれるんだもの。昨日もAmazonで買った本が届いたばかりなの。」

おばあちゃま、プライム会員だった!
しかもかなりのヘビーユーザー!

お年寄りだからネットなんて知らないだろうと先入観で勝手に思い込んでいた自分がとてもとても恥ずかしい。ほんとに恥ずかしい。

そんな私の心を見透かしたかのように、やさしく微笑むおばあちゃま。彼女の新しいものを受け入れる「柔軟さ」と、知識を得るための「行動力」に深い感銘と尊敬の念を抱きました。

そしてそれから私たちは降車駅に到着するまでの短い時間、まるで昔からのお友だちのようにおしゃべりを楽しんだのでした。

「この素材がやわらかくて履きやすそう。色はこれとこれがステキね。」

「お値段が安いのは縫製の質が悪かったりしない?もっと高い方がいいんじゃない?」

「じゃあ、お手頃価格の色違いを2つ買って、お洋服に合わせておしゃれを楽しむのはどう?」

歳を重ねることは、怖いし、不安だし、ネガティブに捉えがちです。ひとり身で生きていくのならば尚更のこと。でも、おばあちゃまとの出会いを通して、好きなものを買って、行きたい場所に足を運び、出かけた先でだれかとの会話を楽しむ、そうやって生きていく30年後の自分の姿を少しだけ想像できたような気がします。自分の心と行動次第で、いくつになっても世界を広げていくことができるのだと。