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ひだまりに咲く犬 9神埼 寧
あの手この手を使って、たんぽぽと距離を縮めようとしたけど、どれもうまくいかなかった。
そうしているうちに、たんぽぽが家族になって1週間がたった。
1日も早くわが家に慣れてほしい。おびえることなく、安心してほしい。少しずつでいいから。そう願って毎日、できる限りケージの中にいるたんぽぽに声をかけた。
「行ってきます」
「ごはん食べた?」
「暑いからお庭にでる?」
通じているかどうかは分からない。
だけどある日、嬉しい出来事があった。なんと、たんぽぽが自らケージの外に出たのだ!ぼうっとしていた時に、突然たんぽぽが目の前にやってきて、思わず目を見開いた。
「たんぽぽ!」
上ずったわたしの声に、たんぽぽは小首をかしげる。そして遠慮がちに尻尾を振った。
出会ったときのように、手を伸ばし頭を撫でる。やった!今度はさわることができた!心なしか、たんぽぽが笑っているように見えた。
——第十話につづく