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ひだまりに咲く犬 10神埼 寧

たんぽぽがわたしに心をひらきはじめ、舞い上がっていた最中。次なる課題が見つかった。

どうやらたんぽぽは、散歩が苦手なようだ。玄関で首輪にリードをつけるまではOK。だけど扉を開けた瞬間、石みたいに動かなくなる。

おやつを見せびらかせても、外に出て手を叩いて誘導してもダメ。

「たんぽぽ、おいで。散歩に行こう」

やさしい声で呼びかける。対してたんぽぽは三角の耳を折りたたんで、困ったような顔をするばかり。

しゃがみ込んだまま小さくため息をついていると、後ろから花梨の声がした。

「あまり人間とお出かけしたことないから、怖いんじゃない?」

「どうしたらいいかなぁ?」

花梨は困ったように笑ったあと、明るいトーンで言った。

「なるべく人がいないところで慣らすとか?」

 

——第十一話につづく

Nei Kanzaki
Writer/Novelist
URL:https://twitter.com/nei_knzk