1/365

ひだまりに咲く犬 11神埼 寧

「なるべく人がいないところで慣らすとか?」

花梨のアイデアに賛同し、わたしはなるべく人の少ない夕暮れの時間を狙って、たんぽぽと近所の林に出かけた。

わたしの家は小高い丘の上に建っていて、近くに自然がある。林なら今の蒸し暑い時期でも風が通るし、たんぽぽも安心するだろうと思ったからだ。

たんぽぽを抱えながら木と木の間をすり抜けて、ちょうどいい場所を見つける。そこにレジャーシートを敷いて座った。

最初は大人しくだっこされていたたんぽぽ。しばらくすると、何か思いついたようにもぞもぞし始める。

そっと地面におろすと、しきりに辺りの匂いをかいで、くるくると回るたんぽぽ。ときどき立ち止まって、わたしの顔をちらりと見てくる。

わたしは立ち上がり、たんぽぽと一緒にその場で回った。するとたんぽぽは嬉しそうにとびはねて、喜びを体で表してくる。

「林なら大丈夫そうかな?」

おどけた声を出すと、呼応するようにたんぽぽが短く鳴いた。

 

第十二話につづく

Nei Kanzaki
Writer/Novelist
URL:https://twitter.com/nei_knzk