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ひだまりに咲く犬 12神埼 寧

たんぽぽと遊んでいたら、あたりはもうすっかり暗くなってしまった。

林を抜けて、家までの帰り道をゆっくりと歩く。
自然とたわむれてだいぶ外に慣れたのか、たんぽぽも問題なく歩みを進めている。

ふと立ち止まり、カラスの羽根が敷きつめられたような空を見つめた。雲がひとつもないから、明日は晴れるかな。本格的な夏に入る前のしめった空気が腕を覆いつくし、汗がにじむ。

「ねぇ、明日は海に行こうよ」

たんぽぽと同じ目線になって話しかけた。

「行ったことある?」

たんぽぽは、ちぎれそうなほど尻尾を振る。

言葉が通じているのかな。もし分からなくても、これから色んな景色を一緒に見よう。きっと同じ気持ちになれるから。

 

-FIN-

Nei Kanzaki
Writer/Novelist
URL:https://twitter.com/nei_knzk

 
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短編小説「ひだまりに咲く犬」全12話をお届けしました。ご覧いただき、ありがとうございます。

次回より、「少しの癒しを与えられる作品作り」をテーマに創作活動をされているcb worksさんによるハンドメイド作品「ランプマン」の世界を、全12回にわたってご紹介してまいります。どうぞお楽しみに。
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