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The GIFT
プレゼントが彩る12の物語(11)天木 麻乃

The GIFT プレゼントが彩る12の物語

二十歳の誕生日
高校の恩師からもらった成人祝いは
ずっしりと重い、黒の万年筆だった

あの時は、ものすごく重たくて
なんだか自分の手には不釣り合いだと感じた

だけれど
あれから十数年

すっかり大人になった今の私は
相変わらずあの万年筆を使っている

あの時、あんなに重たくて
ぶっきらぼうに感じたこの万年筆が
今の私の手にはたまらなくしっくりくる

変わったのは万年筆じゃない
変わったのは私の方なんだ

いつのまにか私も
この凛々しい万年筆が似合う
大人になったのだ

そう思うと
瞼に先生の顔が浮かんだ
先生には、こんな未来が見えていたのかな

「ありがとうございます」

心の中で
もう何回目かわからないセリフを呟く

もしかしたら先生も
同じ気持ちになったことがあるのかもしれない
そんなことを考えた

Mano Amaki
Writer/Illustrator
URL:https://mano-amaki.jimdofree.com/