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三日間だけ生えた羽 第五話柊 織之助

あらすじ:高校の同窓会に参加した主人公・文(あや)。社会人として成長した姿を見せる旧友たちと違い、いつまでも大人になれない自分。そんなとき、ふいに高校3年生の夏を思い出す。天使見習いのルーナと出会い、三日間だけ羽が生えた日のことを。

第五話
 
高校三年生の夏休み前。世の中がじわりと汗をかき始める季節。
彼女は私の前に現れた。進路希望の紙を握った私の前に。

「君を大人にさせにきたよ」

彼女は背中に天使のような羽を生やして、私と同じ制服をきていた。

「警察呼びますよ」

コスプレ好きの不審者だ。そう思った。

「待って違うよ」
「どこが違うの」
「ただの天使なの。君と同じ卒業見込みの天使見習いだけどね」

今日はついていない。答えられない進路希望の紙を渡されるし、不審者に出会うし。

「嘘でしょ」
「じゃあ、大層な話を言ったら信じてくれるの?」

その問いに、私は答えることができなかった。

—第六話につづく

Orinosuke Hiiragi / Novelist