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三日間だけ生えた羽 第四話柊 織之助

あらすじ:高校の同窓会に参加した主人公・文(あや)。社会人として成長した姿を見せる旧友たちと違い、いつまでも大人になれない自分。そんなとき、ふいに高校3年生の夏を思い出す。天使見習いのルーナと出会い、三日間だけ羽が生えた日のことを。

第四話

「大人ってなんだと思う?」

数十分前に人にした質問を、次は私が投げかけられていた。
答えられない。今までは年齢を重ねたら自動的に大人になるものだと思っていた。

「高校生の時、三日連続で休んだことがあったんだけど」
「覚えているよ」
「羽が生えたって話を覚えているの?」
「少ししか知らないけど」

あの時のことを教えているのは、武雄と由美だけだ。高校生の時は二人とも興味津々に聞いてくれたが、今となっては話さなくなった。武雄なんて、哀れみの視線を向けてくる。

「天使の女の子と出会って、三日間だけ生える羽をもらったって話でしょ」
「うん。それで、三日後に羽と女の子がどこかに行った」
「その話がどうしたの?」

由美が頭を傾げた。

「あの時から、大人がなんなのかわからないの」

—第四話につづく

Orinosuke Hiiragi / Novelist