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三日間だけ生えた羽 第七話柊 織之助

あらすじ:高校の同窓会に参加した主人公・文(あや)。社会人として成長した姿を見せる旧友たちと違い、いつまでも大人になれない自分。そんなとき、ふいに高校3年生の夏を思い出す。天使見習いのルーナと出会い、三日間だけ羽が生えた日のことを。

第七話

「嘘だって思ってもいいよ」

ビルの屋上で、体だけが大人になった私は呟いた。

「信じるよ。文じゃ思いつけないくらい大層な話だから」
「小説家に言われちゃ何も言えないよ」

私は苦笑いするしかなかった。由美は、銀行員になった武雄とは違って、小説家になっていた。堅実さの反対側にいる仕事だ。もちろん、何もしていない私よりも大人。

「嘘だったら、六年も天使を追いかけて旅をしていないでしょう」

六年。その言葉が肩に重くのしかかる。決して短くはない時間を、私は過ごしていた。
今も卒業できていない天使見習いのために。

—第八話につづく

Orinosuke Hiiragi / Novelist