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ガールフレンド/ガール・フレンド - 12大月輝

ガールフレンド/ガール・フレンド - 12

私、半分くらい諦めてるんだよね。冷めたコーヒーが舌の上で苦味を増す。礼奈は目を見開いた。その人、恋人がいるの?彼女の言葉選びに身を強張らせる。私は頷く。

ソーサーの上にはコーヒーの染みが広がっていた。私は染みを見つめたまま、ねえ礼奈、と口を開いた。彼氏に飽きたら遊びにおいでよ。私、近い将来ドイツの大学院に進むつもりなんだ。礼奈は私を誇らしげに見つめる。そうね、仕事を言い訳にしちゃおうか。礼奈は唇を噛んだ。それから、両親に向かって、あなたたちが急かすから、もうイヤになっちゃいました、とか言ってさ。

この一言で全てひっくり返っちゃえばいいのに。私の思いは礼奈の口からも溢れて、二人で顔を見合わせた。やっぱりまだ、私には時間が必要だ。私の気持ちを嗅ぎ分けるにも、これから礼奈と改めて友情を築いていくのにも。私たちはきっと、結局好きなように生きちゃうよね。礼奈は自信たっぷりに笑う。やっぱりそうじゃなきゃ、せっかく世界は広いんだから。
 
 
—完

大月輝 / Novelist

 
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短編小説「ガールフレンド/ガール・フレンド」全12話をお届けしました。ご覧いただき、ありがとうございます。

次回より、 白旗ラメントさんによる一話完結型の短編小説 「夢語部(ゆめかたりぶ)」(全12回)の連載をスタートします。御伽噺のような不思議な世界をお楽しみください。
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