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小さなドラマの小さな駒たち - ① 「とびきりのトンポーロー」田崎ゆきこ

小さなドラマの小さな駒たち 1

第1話
『とびきりのトンポーロー』

 私は、あまり手の込んだ料理をしない。普段はもっぱら、コンビニで食事を調達している。料理が得意じゃないうえに、無理をしなくても、十分、おいしい市販品が手に入る。
 そんな私にも得意料理がある。気まぐれに参加した一日クッキングスクールで習得したトンポーローだ。今考えると、一日のみの講座なのに、なぜ主催者はトンポーローを選択したのだろう。普通は、こんなに煮込み時間を必要とするメニューははずすだろうに。
 コンビニのおにぎりも弁当も、プリンも大好き。季節感もあるし、内容も豊富。でも、ごくたまに、照りのいいツヤッツヤの豚肉の塊を、香ばしいタレで煮込んでいると、自分が腕利きの料理人になった錯覚を覚える。ホロホロのトンポーローは、「今度、あの人にもごちそうしてあげようかな。」と、心の余裕も呼び起こすのだった。

YUKIKO TASAKI