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小さなドラマの小さな駒たち - ⑧ 「刺繍をする夜」田崎ゆきこ

小さなドラマの小さな駒たち 8

第8話
『刺繍をする夜』

 ちくちくと、表情のない布に、針を刺していく。私の指先から、小さな動物や花が生まれていく。刺繍をはじめたきっかけは、高校のクラブ活動だ。 
 顧問の家庭科の谷先生は、日本でも有名な刺繍家で、国内外でも作品を発表していた。刺し方だけでなく、各国の刺繍の歴史を、よく話てくれた。 
「フランスでは刺繍は、権力の象徴だった。強い権力を持つ人間は、より精緻で、豪奢な刺繍を刺し子に命じることができた。」
 権力者のためでなく、自分のためだけに刺せるのは、なかなかの贅沢なのだ。それを聞いて、より刺繍が好きになった。 
 今、取り掛かっているのは50×60の作品。やかんに花をたっぷり活けてある図案。これを額装にするつもりだ。満足のいく仕上がりなら、かつての恩師にお見せしたいと思う。

YUKIKO TASAKI