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小さなドラマの小さな駒たち - ⑩ 「月に一度のおままごと」田崎ゆきこ

小さなドラマの小さな駒たち 10

第10話
『月に一度のおままごと』

 コンビニのおにぎりが大好き。納豆とチーズを常備して、そこからタンパク質を摂取しるという貧乏学生のような食生活。
 だが、月に一度第三土曜日の夜、友人と連れ立つて季節料理「志むら」に行く。志むらは、きれいな駅ビルのこじんまりしたお店。
 この日は新鮮なお鯛さんがひとひらひとひら花弁のように造られ、久谷の器に盛られてくる。筍の乳白色と青緑のわかめの色彩の対比が美しい炊き合わせ。目にも舌にも響き渡るごちそうだ。
 この日ばかりは、気心の知れた友人との会話も馬鹿話ではなく、ちょいと気取ってガクジュツテキなことをひねり出す。
 美しい料理を前に高尚な会話。優雅な二人の妙齢の美女ごっとは、幼い頃楽しんだままごとの延長かもしれない。

YUKIKO TASAKI