Story

私のリュックには、素敵なものがたくさん詰まっているゆづき

私のリュックには、素敵なものがたくさん詰まっている

結婚しない理由を聞かれ、しばし考えた。……余分だから?だって、私のリュックには必要な物が入っている、充分に。もしこれ以上何かを入れたら、重くて歩けなくなってしまう。一緒に歩くパートナーも、要らない。自分がトキメク場所へマイペースに歩いて行き、休みたい時に足を止めたいのだ。相手に合わせるのはモヤモヤするし、私に合わせて待ってもらうのも申し訳ない。

私は今32歳だが、20代前半はリュックから溢れるほど詰め込んでいた。終業後は習い事に明け暮れ、土日の予定はすし詰めだ。20代後半から要らない物を捨てはじめ、今は必要な物だけが残っている。この断捨離にパートナーが含まれていたのだ。だから私はノンマリなのである。

必要なリュックは皆違う。サイズも中身も人それぞれだ。走れないと困る人もいれば、動かなくていい人もいる。だから「あの人が持っているから」と、服だ彼だ赤ちゃんだと詰め込むと破裂するのだ。

極力ミニマルに努めても、私に必要な物は少なくない。健康、美容、仕事、夢、一人暮らし、アニメ、カラオケ、友達、美術館。血迷って恋人を作るとこれらのペース配分が乱される。相手がどんなに素晴らしくとも関係ない。まるでけむたい鉛玉。リュックにボーリング玉をブチ込んで歩いてるようだ。重い、歩けん、無理過ぎる。恋人でさえストレスの限界を超えるのだ。結婚なんて重いものをリュックに縛り付け、東京湾ダイブするようなものである。

均一規格なiPhoneだって、どんなアプリをインストールするかは十人十色だし、一周回ってハンドメイドが愛される時代になったのだ。自分だけの素敵なリュックにしようじゃないか。

 

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第2回「わたしのノンマリライフ」エッセイ募集コンテストにご応募いただいた方々の中から、ゆづきさんのエッセイをご紹介しました。