Story

この世界に恋愛をしない自由はないのだろうかヒロコ

この世界に恋愛をしない自由はないのだろうか

この世界に恋愛をしない自由はないのだろうか。恋人がいないと非国民扱い。「しばらくはいいかなあ」なんて漏らせば、できないだけでしょと鼻で笑われた。

確かに、私は生まれてこの方恋人ができたことがない。デートした回数だって片手で数えられるくらいだし、告白された試しだってない。だからこそ、恋人が欲しくて欲しくてたまらない日だってあった。

だけれど、いつしかそんな自分が空回りしていることに気付いた。あれ、私はなんのために恋人が欲しいんだっけ?誰のため?誰に負けないため?

恋人ができない自分は、欠陥人間のように思えた。大学で出会って、卒業後数年して結婚。そんな当たり前が、いつしか夢物語の幻想だと悟った。私はきっと「ふつう」ではないんだろう。きっとこの気持ちは、私と、私と同じ想いを抱いたことのあるあなたにしかわからない。誰にも必要とされない夜を、君は過ごしたことがないでしょう。

他人を好きになれないと、虚勢を張った。本当は、空っぽの自分を受け入れてもらえないことが怖くて怖くてたまらなかった。誰かの胸にすがりつきたかったけど、否定される未来ばかりを描いてしまったから。どうやら私はひどく後ろ向きな人間らしい。

けれど最近、そんな自分を愛おしく思えてきた。誰にも愛されないなら、自分が一番愛してあげればいいじゃないか。私なら、わたしを一生見捨てたりしないし、一番の味方でいてあげられる。負け犬の遠吠えだって、ひとは嘲笑うかもしれない。こんな女にはなりたくないと、苦虫を噛み潰したような顔をするかもしれない。

それでも。

私は、人を好きになれないわたしが、愛おしい。自分に言い聞かせるようにそうつぶやくと、窓から覗いた月がいつもより綺麗に見えた気がした。

 

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