Story

フワクの四十代ひろ

フワクの四十代

かつて思い描いていた四十代。夫がいて、子どもがいて、口のうるさい姑がいて。そんな平凡な幸せだった。

しかし現実はそうもいかず、私はまだ未婚。夫も彼氏もおらず、いるのは結婚にうるさい実母だけ。そんな矢先、ふたりの友人から同時にイベントに誘われた。

『四十代からの婚活』
『四十代からの資格』

今さら結婚?今から資格?
特に断る理由もないが私は悩んだ。

学生時代の友人は言う。「孔子だって『四十にして惑わず』って言ってるじゃん!迷ってちゃダメなんだよ」私は「孔子って誰よ」と笑いながら考えた。そして考えた先にどちらも参加することにした。

はじめての婚活セミナー。メイクもにはいつも以上に気合をいれた。しかしいざ蓋を開けると緊張が気合を上回った。なにせ自己紹介をしようとすれば声が震え、その口元までも緊張で震えてしまう。好きなタイプや、好きな食べ物…。そんな「好き」ばかりが求められ、なかなか心の内を話せなかった。いい人なんていない、最後は居酒屋で愚痴をこぼして終わった。

一方、資格セミナーでは、数ある資格に夢を膨らませた。結婚アドバイザーならひょっとして縁があるかも。ファイナンシャルプランナーなら自分の将来設計にも役に立ちそう。結婚へのフワフワした気持ちと未知なる業種へのワクワク。帰り際、カバンにたくさんの資料を詰め込むとカバンは期待で膨れた。

孔子が言うことに、四十而不惑。
つまり四十代は惑わないってこと。

たしかに迷うことなく進んだ方がいいのかもしれない。先のことを心配して何もできないくらいなら、失敗して「負け」に負けないメンタルを手に入れた方がいいような気がする。惑わない。それが不惑。

もしくは「不枠」と読み替えて、人生の枠にはまらない生き方をしたっていい。アイドルと付き合いたいなんてフワフワした気持ちでいるのもいいし、ワクワクしながらアフリカのジャングルを目指すのもありだと思う。そんなフワフワとワクワクをあわせたのも、四十代フワクなのかもしれない。

もう迷わない。何が四十だ。イチから始めたって遅くない。むしろゼロからつくったっていい。フワクの四十代が動き出す。