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三日間だけ生えた羽 第六話柊 織之助
あらすじ:高校の同窓会に参加した主人公・文(あや)。社会人として成長した姿を見せる旧友たちと違い、いつまでも大人になれない自分。そんなとき、ふいに高校3年生の夏を思い出す。天使見習いのルーナと出会い、三日間だけ羽が生えた日のことを。
第六話
「私の卒業試験は君を大人にすることなの」
「じゃあ卒業できないね」
親のいない家のリビングで、天使見習いはくつろいでいた。ルーナという名前らしいが、日本語を流暢に話している。
「文は大人になりたくないの?」
「なんで名前知っているの」
「天使見習いだから」
ルーナが無邪気に笑う。
「まだ信じていないから」
「じゃあ、文にも羽をあげる」
「は?」
ルーナが微笑んだ時には、私の背中にわずかな重さがのしかかった。
さっきまでなかったものがある、気がする。
白鳥のような羽が視界の端にチラチラと見える。
「何をしたの」
「プレゼント。大人になるための」
—第七話につづく
Orinosuke Hiiragi / Novelist