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美しく官能的な作品に隠されたドラマ/グスタフ・クリムトの「接吻」ノンマリ編集部

こんばんは。心のキーアイテムを探すアートの旅。今夜のセレクトはこちらの作品です。

グスタフ・クリムト「接吻」

おしゃれ、素敵、と女性ファンが多い画家クリムト。中でも特に人気の作品がこの「接吻」です。情熱的なキスで幸せの絶頂にいるかのようなシーンですが、二人が実は崖の上にいることにはお気づきでしょうか。この先、二人に待ち構えている未来は明るいばかりとは限らない、そんな不安定さを微かに感じさせるところも、多くの人々が惹かれる所以でしょう。

美しいだけではなく官能的な印象もあるこの作品には、キス以外にもセクシャルなパーツが隠されています。

男性の洋服の黒い棒のような柄は、男性の性器を表現したもの。女性の洋服の丸い柄は、女性の性器や子宮を表現したものと言われています。そう思うと、ほんのりピンク色に上気している女性の頬は、キスだけでは終わらない気持ちの高ぶりのように見えます。

ここで、クリムトの作品にも出てくるギリシャ神話「ダナエ」を少し紹介しましょう。

あるところにダナエという美しい姫がいましたが、「孫に殺される」とお告げを受けた王は、孫ができないようにダナエを閉じ込めてしまいます。ところが大神ゼウスがダナエに恋をしてしまい、黄金の雨に姿を変えてダナエと交わってしまいます。そのシーンが、このクリムトの作品「ダナエ」です。

ともすれば美しい女性の絵にしか見えないかもしれませんが、先ほどご紹介したパーツが、この作品にも描かれていることにお気づきでしょうか。黄金の雨が自身に交わり、うっとりと目を閉じるダナエですが、この一夜で、彼女は王の恐れる息子を身ごもることになります。

美しく幸せに満ちた快楽、秘めたる女性の性愛、背後に忍び寄る不安。作品に隠されたドラマには、魅了されざるを得ません。

接吻/グスタフ・クリムト
製作年:1907-1908年
種類:油彩
所蔵:ベルヴェデーレ宮殿オーストリア絵画館ダナエ/グスタフ・クリムト
製作年:1907-1908年
種類:油彩
所蔵:ベルヴェデーレ宮殿オーストリア絵画館