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お裾分け好きの裾野さん 第七話柊 織之助
「今日うちで天ぷらしようと思うんだけど、味見してもらえないかしら」
会社帰りで言われたのは、なんとも魅力的なお誘いだった。天ぷらなんて後片付けが大変な料理だから、ずっと作ってない。かといって食べたくないわけじゃない。
「喜んで!」
なんて柄でもないのに、私は元気に返事をした。
「シソとちくわ」
「いただきます」
リビングに置いてある低いテーブルで、天ぷらをいただいた。
——ザクサクッ。
「美味しい。裾野さん、衣サックサクですごいです」
「片栗粉とマヨネーズを入れてるから」
「片栗粉は聞いたことありますけど、マヨネーズもですか?」
「それだけじゃないのよ。衣に氷を入れて冷やすのも大事」
「結構大変そう」
「そんなことないよ。今度一緒に作る?」
裾野さんとなら、たまには手間のかかる料理もいいかな。なんて思えたお裾分けだった。
——第八話へつづく…
Orinosuke Hiiragi / Novelist