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お裾分け好きの裾野さん 第九話柊 織之助
「南蛮漬けってなんですか?」
今日の裾野さんは、ちょっと酸っぱい匂いと一緒にやってきた。おいしそうな匂いは、裾野さんの持っているお皿から。
「東南アジアを経由してやってきたポルトガルやスペインのことを“南蛮”っていっていてね。だから南蛮からやってきた料理ということで、南蛮漬けなの」
「歴史から教えてもらえるとは」
「味も美味しいのよ。ご飯に合うの」
最近は裾野さんが来るだろうタイミングに合わせて、ご飯を炊くようになってしまった。いつもならコンビニ飯で済ませていた夕飯も、今では健康的になった。
「たれ?みたいなのが魚の衣に吸われていて美味しいです」
初めて食べる南蛮漬けだったけど、なんだか懐かしい味がしたのだった。
——第十話へつづく…
Orinosuke Hiiragi / Novelist