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ひだまりに咲く犬 2神埼 寧

きっかけは、テレビで観た保護犬の特集。わたしは目の前の夕食を食べるのも忘れて、食い入るようにテレビを観ていた。

「たしかうちの近所で、犬の譲渡会がひらかれているよね」

母がぽつりとつぶやいた。
その言葉にハッと我にかえり、母を見つめる。

「葵、行ってみたら?」

間髪をいれず、母が言う。急な展開に声も出ない。わたしが言いよどんでいると、母は笑顔で話しだした。

「妹の花梨も犬が欲しいって言ってたし。あなただって、興味があるんでしょう?」

「……興味はあるけど」

「いいじゃない、見に行くだけ行ってみれば?」

……そうだよね、見学してすぐ譲渡してもらえるわけでもないし。誰に言い聞かせるわけでもなく、心でつぶやいた。

「うん、見に行ってみるよ」

こうしてわたしは、次の日曜日に開催される譲渡会に行くことを決めた。

 

——第三話につづく

 

Nei Kanzaki
Writer/Novelist
URL:https://twitter.com/nei_knzk