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ひだまりに咲く犬 3神埼 寧

「ちょっと、花梨!ウインカー出して」
「あっ、あぶないあぶない!ありがとうお姉ちゃん」

やってきた日曜日。妹の花梨とふたり、車で譲渡会の会場に向かっていた。免許をとって間もない妹の運転には肝が冷える。当の本人は舌を出し、おどけた表情で運転しているものだからあきれてしまう。

どうにか駐車場に車をおさめて外に出ると、春から夏にうつろうシーズン特有の湿っぽい暑さが肌にまとわりつく。

「どんなワンちゃんがいるのかなあ?」

陽気な顔をして花梨は言った。

あの夜、帰宅した妹を譲渡会に誘ってみたところ、ふたつ返事でOKがでた。よっぽど犬が飼いたいらしい。

「あ、ここみたいだよ」

花梨が指さした方に、鈍色(にびいろ)のビルが見えた。少しだけ緊張しながら、会場へ続く階段をのぼる。

 

——第四話につづく

 

Nei Kanzaki
Writer/Novelist
URL:https://twitter.com/nei_knzk