1/365

ひだまりに咲く犬 4神埼 寧

譲渡会の会場に入ると、部屋の半分を囲うくらいの大きなケージがあった。その中に数匹の犬たちが集められていて、それぞれ楽しそうにはしゃいでいる。彼らのカン高い鳴き声や、低いうなり声が部屋中に響く。

しばらく犬たちを見つめていると、受付の人に声をかけられた。

「見学の方はこちらにご記入をお願いします」

そう言われて渡されたのは、一枚の紙。いちばん上に、”ひまわり譲渡会 参加者情報”と書かれていた。受付の椅子に腰かけ、住所や氏名、ペットの有無などを記入する。

わたしが書類に記入をしている間に、花梨はひと足先に犬を抱きかかえていた。頭のてっぺんからしっぽの先まで白い犬だ。

「お姉ちゃん、この子お山育ちなんだって!」

花梨がうわずった声で言う。

 

——第五話につづく

 

Nei Kanzaki
Writer/Novelist
URL:https://twitter.com/nei_knzk