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ひだまりに咲く犬 6神埼 寧
お山で育った白い犬は、人を信用していない。まるで過去のわたしみたいだ。学生時代、周りとなじめずにひとりで泣いていたっけ。
「この子を愛したい」
言葉がつるりと口からこぼれた。
食べないでと言わんばかりの瞳で見つめてくる犬を、心からいとおしく思う。君が思っているより、世界は残酷なんかじゃないよ。
「立候補していいですか?この子の飼い主に」
目の前の小さな犬に昔の自分の姿が重なり、涙が出てくる。花梨を見ると、彼女も思うところがあるのか鼻を真っ赤にしていた。
「あなたたちの家族にむかえてあげて」
心の中で一輪の花がゆらめく。まばゆいくらいのレモンイエロー。その色は、わたしたちの喜びに反応しているように揺れている。ああそうだ、たんぽぽ。君は、たんぽぽの綿毛だね。
——第七話につづく