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三日間だけ生えた羽 第二話柊 織之助
あらすじ:高校の同窓会に参加した主人公・文(あや)。社会人として成長した姿を見せる旧友たちと違い、いつまでも大人になれない自分。そんなとき、ふいに高校3年生の夏を思い出す。天使見習いのルーナと出会い、三日間だけ羽が生えた日のことを。
第二話
「どうしたら大人になれる?」
私は武雄に言っていた。
だがタイミングが悪かった。武雄に見知らぬ女性が駆け寄ってきた。武雄が申し訳なさそうにこっちを見ると、女性と一緒にこの場から離れていく。
途中で武雄が止まった。そのまま振り返る。
「仕事をするのが大人だろ」
そう言って女性と別のテーブルへ移るスーツ姿を、私は黙って見ていた。
裸眼で水の中に潜ったような気持ちになる。視界が悪くて、どうしたら大人になれるのかわからない。
疑問から逃げるように、私は窓際へと移動した。
手には一口も減っていないワイングラス。お酒は飲めない。タバコも苦手だし、コーヒーも飲めない。まるで子どもだ。
「文(あや)、久しぶり」
振り返ると、ドレスを来た女性が立っていた。
—第三話につづく
Orinosuke Hiiragi / Novelist