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三日間だけ生えた羽 第十話柊 織之助
あらすじ:高校の同窓会に参加した主人公・文(あや)。社会人として成長した姿を見せる旧友たちと違い、いつまでも大人になれない自分。そんなとき、ふいに高校3年生の夏を思い出す。天使見習いのルーナと出会い、三日間だけ羽が生えた日のことを。
第十話
「答えは見つけられた?」
ビルの屋上で由美が言った。
私は、まだ答えられていない。
「今もきっと私の隣で見ているんだと思う。私が大人になる瞬間を待って」
由美が静かに頷く。
「でも答えがわからない」
さわわと風が吹いた。冷たい風だ。考えすぎて熱くなった頭を冷やしてくれる。
「由美、どうしたら大人になれるの?」
「知らない」
質問が包丁のように切られた。由美は頭をかくと、空を見上げた。
「私が大人に見える?」
「見えるよ。働いているし」
「じゃあ、働いていないおじいさんやお婆さんは子ども?」
「それは……違う」
由美のように夜空を見れず、下を向く。
「まあなんとなくだけど」
由美は深い息を夜空に向けて吐いた。
「誰かに言われてなるものじゃない気がする」
—第十一話につづく
Orinosuke Hiiragi / Novelist