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三日間だけ生えた羽 第十一話柊 織之助

あらすじ:高校の同窓会に参加した主人公・文(あや)。社会人として成長した姿を見せる旧友たちと違い、いつまでも大人になれない自分。そんなとき、ふいに高校3年生の夏を思い出す。天使見習いのルーナと出会い、三日間だけ羽が生えた日のことを。

第十一話

同窓会が終わって、みんなはタクシーや電車を使って帰っていった。私は由美と武雄と別れ、どこに止まるかわからない列車に乗っている。

あの三日間だけは大人になれると思っていた。羽があって、実際に飛んだ。このまま空までいけば、大人になれる気がした。

なんて馬鹿なことを考えているんだ。
飲んでもいないワインのせいだ。きっと。

あの三日間で目的が達成できなかったルーナは、宣言通り消えてしまった。羽も一緒に。
私はそれからずっと、ルーナの面影を探して旅から旅への生活を続けている。一番近くにいるはずなのに、遠くに行ってしまった気がした。

揺れる車内で、思わず笑った。
だから子どものままなのかな。

誰かが言った大人の型に、自分がハマったところで大人にはなれない。

—第十二話につづく

Orinosuke Hiiragi / Novelist