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Letters. 君と詠む歌 第一首玉舘(たまだて)
あらすじ:前世占いで「ふたりの前世は平安時代の歌人」と告げられた玉緒と後輩の天津。ひとりで生きることに慣れきっていた玉緒は、親しげに距離を詰めようとする天津の若さを暑苦しく感じながらも、彼と二人で"ひと夏の思い出"をつくろうと考える。正反対な二人がおもしろ半分で詠んだ12首の短歌と、その歌が生まれた12の瞬間の物語。
第一首
「同じこと考えてた」の高鳴りが
君と同じでありますように
—
「俺たち、前世は平安時代の歌人なんですね」
うれしそうな声をあげる隣の彼は、職場の後輩・天津という能天気な男である。
溜まっていた仕事を片付けるため休日出勤をした帰りのこと。「一緒なんですね、帰る方向」「せっかくだから占ってもらいましょうよ」と、たまたま同じような理由で出社していた彼に誘われるまま地下街のワンコイン占いに立ち寄ったのが間違いだった。
「平安時代にも歌手っていたんですね、玉緒さん」
「歌人だから短歌ですよ、ポエムみたいなやつ」
「へぇ、玉緒さんって学生時代は文学部でした?」
飲み会の席くらいでしかまともに話をしたことがないのに、甘ったるい声で会話を続けようとするその若さが少し暑苦しい。寄り道なんてせずに、さっさと帰ればよかった。
「まぁ文学部でしたけど」
「ってか、なんで年下に敬語なんですか」
絶対にこの男は私の反応の薄さを見て楽しんでいる。
「天津くん」
「おっ、はい」
「この際、一緒に短歌始めてみましょうか」
「いいっすね、俺も同じこと考えてました今」
「…はい?」
—第二首につづく
Tamadate / Novelist & Poet