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Letters. 君と詠む歌 第三首玉舘(たまだて)
前回までのあらすじ:前世占いをきっかけに、一緒に短歌を始めることにした玉緒と天津。若い後輩との年齢差に戸惑う玉緒だったが、「今度デートしましょう」と天津からデートの誘いを受ける。
第三首
味気ないハートより リンゴを送る
あとはあなたの 視力に任せる
—
「別に私、天津くんと付き合う気ありません」
人気の少ない会社の喫煙室で会った瞬間に、そう言ってくる玉緒さんの声は今日も相変わらず氷点下である。
「それは残念です」
「ところで最近の若い子って、ハートの絵文字よく使うんですか?」
「残念、あれはリンゴでした」
それは残念ですね、と言いながら長い前髪を鬱陶しそうに耳にかける。
「玉緒さんって、いま恋人いるんですか?」
「いませんけど」
ちょうどいいじゃないですか、と持っていたライターを渡すと、煙草の味を知らなそうな彼女は妙に手慣れた仕草で火をつけた。
「それに付き合ってなくても、デートはしますよ」
「天津くんは私とデートしたいんですか?」
「ほら、短歌も作ってみたいし」
俺のよりも幾分か軽い紫雲が、プカプカと浮かんで柔らかく広がった。
「じゃあとりあえず、また一緒に帰ってみます?」
—第四首につづく
Tamadate / Novelist & Poet