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Letters. 君と詠む歌 第六首玉舘(たまだて)

前回までのあらすじ:仕事の後、一緒に帰ることになった二人。天津はコミュニケーションが上手で、彼の言葉はどれも仄かに恋の匂いがする。一方で「なにか食べて帰ります?」と聞かれても「私は大丈夫です」と答えてしまう自分は可愛げがないと思う玉緒だった。

第六首

夏なのに 折るアイスすら食べてねえし
俺たちたぶん 彩度が低い

「天津くんって平安時代の短歌、知ってます?」
「あー、なんかサラダのやつとかなら知ってます」
「サラダ…は多分、平安時代ではない気がしますけど」
「さすが文学部生」

まぁ、とか、えぇ、とか暑さで溶けきった適当な返事をして、さっさと帰りたそうにしている玉緒さんの腕をひく。

「なんですか?」
「玉緒さん、アイス好きですよね?」
「…ええ、スーパーのアイスですか」
「あ、ついでに花火買って一緒にしましょうよ」

じーっと俺を見つめる彼女の瞳は黒々としていて、ジジジジジジジ、とさっきからスーパーの店先でうるさいセミの声は、この目の奥から鳴り響いているような気がする。

「女との夏の思い出をこの際コンプリートしちゃおっかな、とか考えてますか」
「そんな、短歌のネタ集めですよ」

—第七首につづく

Tamadate / Novelist & Poet