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Letters. 君と詠む歌 第七首玉舘(たまだて)
前回までのあらすじ:適当な返事でさっさと帰りたそうにしている玉緒に、アイスを食べようと提案する天津。ついでに一緒に花火もしようと誘うが、女との夏の思い出をこの際コンプリートしようとしているのではと指摘される。
第七首
そういえば 気が狂う前兆だった
一緒に食べた ぬるいレバニラ
—
「お邪魔します」
どうぞ、と招いてくれた彼女の部屋は白くて、ありきたりで、少し足りなくて、彼女の部屋だった。
「天津くんの家はここからどれくらいですか」
「歩いて大体15分だから、すぐですね」
特に急ぐわけでもなく、まるで俺がいないかのように夕餉の準備をし始める彼女に「アイス溶けちゃいますけど、どうします?」と立ち上がってたずねると
「今朝の残りのレバニラがあるので、それと食べちゃいましょう」
という、なんとも的外れな返答があった。
「レンチンが足りなかったですね」
「ぬるいレバニラも、これはこれで楽しいと思います」
ぬるいレバニラと、ギンギンに冷えたビールと、溶けてもはやジュースになってしまったアイス。それに花火もある。
「なんだか俺」
「はい?」
現状を楽しんでいる自分自身と、口元を少しほころばせながらビールを飲む彼女の姿が、どちらも予想外で驚いた。
「楽しいです」
「それはよかった」
—第八首につづく
Tamadate / Novelist & Poet