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Letters. 君と詠む歌 第八首玉舘(たまだて)

前回までのあらすじ:アイスと花火を買って向かった先は玉緒の自宅。夕食はぬるいレバニラと冷えたビールと溶けたアイス、そして花火。意外にもこのおかしな状況を楽しむ二人だった。

第八首

手を合わせ ごちそうさまを言う君の
夜はきっと ずっと綺麗で

「天津くんっていくつだっけ」
「今年で25です」
「へぇ」

じゃあ、私の三つ下だ。三つ下の手が、私の髪の毛に触れた。

「綺麗ですね」
「そうやって口説くのって、ちょっと古いと思うよ」

本音ですよ、と言いながら皿の上の余ったレバニラを箸でちょんちょんと突きはじめた。温め直す気はない。

「ごちそうさま」
「…玉緒さんって磨けば光るタイプなのに」
「もともと光ってる人を見つける方が手っ取り早ってこと、歳を取るとみんな気付くのよ」
「怒ってます?」
「なんで私と前世占いしたの」

確かに私は少し怒っていた。占いとか、前世とか、短歌とか。ひと夏の夢みたいなものを、年甲斐もなく欲していた。アイスとか、レバニラとか、デートとか。そういう、なにげない日々は、べつに天津くんじゃなくていい。

「玉緒さん酔ってます?」

袋から花火を取り出そうとする彼の手を制する。

「こういうのは彼女とやれば?」

—第九首につづく

Tamadate / Novelist & Poet