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ガールフレンド/ガール・フレンド - 5大月輝
Rとの会話はスムーズに進んだ。最近、丸の内方面って行ってないんだよね〜、楽しみ!という彼女の言葉に揺さぶられる。大学生の頃のふんわりとした笑顔が浮かんで、私は身を固くした。脳裏にある導火線がじりじりと灯されていくような、何か鋭利なものに背中の神経を一つ一つ逆撫でされているような感覚が喉を締め付ける。足の裏に汗をかいているのに気づく。
漂ってくるアールグレイの匂いが鼻をくすぐる。少し古ぼけたような懐かしい匂いに、私はRがいつも借りていた図書館の本を思い出す。いつ話しても、何かしら新しい本を読んでいた。食堂でたまたま見かけた時、彼女はいつも通りに本を開いていた。緑色の背表紙だった。私の視線に気づいた彼女が顔を上げて、ゆっくりと微笑む。挨拶だけして私は食堂を後にしたけど、振り返った時、深緑のリボンで綺麗にハーフアップにされた彼女の髪が風で揺れるのが見えた。
—第6話につづく
大月輝 / Novelist