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ガールフレンド/ガール・フレンド - 6大月輝

ガールフレンド/ガール・フレンド - 6

礼奈、と彼女の名前は異質に私の唇の上に響いた。土曜日のお昼前の空気がひんやりと身体の中を満たす。礼奈は黒色のコーデュロイ生地のワンピースを着ていて、上に白いカーディガンを羽織っていた。持っているバッグは小さく上品で、ヴィンテージのようにしんなりとした質感を醸し出していた。赤いリップが半月を描いて私を見つめている。

待った?というお決まりの文句も新鮮に聴こえる。自分の靴の先が少し汚れているのが気になった。そうでもないよ、と口にする。礼奈は目尻を下げた。正直な性格、変わってないね、と安心したような声音で言う。

朱莉、今日のレストランには行ったことあるの? 私は頷く。こっちだよ、と歩道を渡って、ビックカメラの脇の道を行く。デートで?少し遅れて礼奈が聞く。会話の方向がそう進むとは思っていなくて、私は身を引いた。……ううん、違うけど。礼奈は私をちらりと見上げると、そうなんだ、と前を向いた。
 
 
第7話につづく

大月輝 / Novelist