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ガールフレンド/ガール・フレンド - 8大月輝

ガールフレンド/ガール・フレンド - 8

コーヒーカップの湯気が細く勢いよく登っていくの見ていた。礼奈は腕時計で時間を確認する。午後一時。一周回ってきた感覚がある。

持ってきたバッグはサマンサからコーチになり、腕時計も少し値段が張るものになったとはいえ、私たちの問題は変わっていないように思えた。私には彼氏がいない、礼奈には彼氏がいる。いない私は、いつ結婚するのとか、いい人はいるのかとか心配される。彼氏がいたらいたで、一体いつ結婚する気なのか、子供は産む気なのかなど、両方の両親から問われる羽目になる。

まさか、彼氏の両親が保守的だとは思ってなかったな、と礼奈は観念したように笑った。私の両親も、と今度は呆れたような目つきになる。礼奈には癖が一つ増えていた。込み入った問題を話す時に、目を上の方にやって、爪をいじる。なんのために仕事を始めたんだろう、という呟きは、コーヒーに砂糖を入れる音に紛れた。
 
 
第9話につづく

大月輝 / Novelist