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ガールフレンド/ガール・フレンド - 9大月輝

ガールフレンド/ガール・フレンド - 9

私の思考と唇は、しばらく境界線を探して彷徨った。何年か経ったはずなのに、私と礼奈の間の空気は軽かったし、むしろ、話さなくてはいけない話題の多さに飽和しそうだった。

礼奈は海外にも出張に行く。私は大学最後の年に留学をした。私は何を見て、礼奈は何を見たのか。それはどの程度同じで、どの程度違うのか。眉を上げる仕草も、新しく見る礼奈の表情だった。礼奈のキャリアを、礼奈の将来を、彼氏はどう考えてるんだろう。

そんな彼氏なら、別れちゃえば?私は最終的に境界を越えた。コーヒーカップを掴もうとしていた礼奈の指が止まった。もう四年も付き合ってるのに?私の方を訝しげな目で見ている、かと思いきや、想像よりも爛々とした目をしていた。唾がたまるのを感じて、返答に遅れる。朱莉、悪いこと言うんだね。なじるような言葉を、礼奈はまるで賛辞かのようにゆったりと口にした。
 
 
—第10話につづく

大月輝 / Novelist